「土方さん、聞きやしたぜィ」

「何を」

振り返る俺に、総悟が笑った。

「告白の話でさァ」









「終わりが告げる始まりの鐘」〜5分前〜



















立ち止まる俺を追い越して、総悟がふ、と鼻で笑った。



「何で知ってるんだって顔してまさァ」

「…お前」



目の前でうっすらと笑みを浮かべる総悟を、眉を寄せて見つめた。



「あの時寝たふりしてやがったな?」

「さァて、何の事やら」



ひょいと肩をすくめて誤魔化す総悟。

その仕草で図星だったのだと、俺は確信した。



あの時―――

今日の午後、教室での俺との会話。

それをコイツは密かに聞いていたに違いない。



…バレてんなら今更隠す必要もねェか。



俺はひとつため息をついて、また歩き出した。

























「土方くんは告白するの?」



さっきのの声が蘇る。

俺は、その問いには答えなかった。



なんとなくアイツには言い辛い気がしたから。

本当になんとなくだけど。



俺が誰を好きなのか、は知っている。

だからそいつに告白しようと考えていることも、

別に隠す必要はなかった。

…だけど。



「うまくいくといーねぇ」



そう言って微笑んだアイツの表情が、妙に脳内に焼きついている。

























「土方さん」



総悟の呼ぶ声でハッと我に返った。



「率直に聞きますけど、アンタの好きな人って」



そこまで言って、総悟はじっと俺を見た。



ですかィ?」



―――違う。



そう答えると、俺を見る総悟の目が驚きの色を濃くした。



「へェ…」

「何だよ、その目は」

「いや…ちょっと意外だったもんで」

「だから何が」

「俺ァてっきりを好きなもんだとばかり」

「…何でそうなるんだよ」



ふ、と思わず笑ってしまった。

…俺が、を?



「だって土方さん」



自分では気付いてないのかもしれやせんが。

そう言って総悟は付け加えた。



と話してる時の土方さんは、いつも優しい顔してますぜィ?」

























俺にとってのは…なんだ?

部屋の天井を見つめながら、ふと考える。



アイツ、コロコロ表情変わるから一緒にいて飽きねェし。

しっかりしてそうなのに意外と鈍臭ぇから、目が離せなくて。

…傍に居てェな、って思わせるような…そんな存在。



…友達。

友達、なんだろうか。



と話してる土方さんは」



総悟の意味深な笑みがよぎる。



「いつも優しい顔してますぜィ?」



それはきっと…アイツが笑ってるからだ。



ベットに伏せて、俺は目を閉じた。



―――気が付けば俺は、の事ばかり考えている。

























卒業式当日。

近藤さんや総悟、剣道部の後輩たちと別れた後、

俺は静まり返っている廊下を歩いていた。

目的は…ひとつ。









ある教室の扉をガラッと開ける。

そこにひとり佇む姿があった。



「…十四郎君」

「…悪い、遅くなった」



振り向いた彼女は小さく微笑んで、いいのよ、と首を振った。



「どうしたの?」



読みかけていた本を鞄にしまいながら、彼女が言う。



「折り入って話がある、だなんて」

「…あぁ」



彼女からは少し離れた後ろの席に腰掛けて、



「単刀直入に言うけど」



と、俺は言葉を続けた。



「俺、お前のこと…好きだった」



真っ直ぐに彼女の背中を見つめる俺と、

窓の外をじっと見ている彼女との間に沈黙が流れる。



…嘘じゃない。

昔から病弱だったお前を…

俺が守ってやる、ずっとそう思っていた。



…でも。



「…今は」



窓の外を見やったままの彼女が呟いた。



「今は、違うのね」



小さく笑みを浮かべた彼女が振り返った。

俺は何も答えず、ただ小さく首を縦に振った。



でも今。

俺が守りたいと、傍に居たいと思うヤツは…



「―――さん、でしょう?」



驚いて顔を上げると、彼女はやっぱりと笑った。

窓から日差しが差し込んで、なんだかとても眩しく感じた。









「…じゃあ、私そろそろ帰るね」

「あぁ…」



カタンと席を立ち、

ドアに手をかけた彼女の背中に、



「ありがとな」



と呟いた。



…ケジメ、つけさせてくれて。



彼女はただ笑って、さよなら、と教室を後にした。

























しんとしている廊下を歩いてく。

教室までの間、俺はずっと考えていた。



に…どうやって言おうか。

何と言って伝えようか。



お前が好きだ。

傍に居てくれないか、って。



…でも。

キュッ、と右足が音を立てて止まった。



は俺のこと、友達だと思ってんだろーな。



…今更もう遅いかもしれない。

自分の気持ちに気付くのが遅すぎた。



「お互いうまくいくといいな」



まさか、自分の言葉に首を絞められるとは思わなかった。

俺は苦笑いをひとつ浮かべ、また再び歩き出した。





―――刻一刻と、鐘の鳴る時刻は迫っている。





「―――待てよ、!」















――――――――――
「終わりが告げる始まりの鐘」番外編が終わりました〜
なんか…久しぶりに土方さん書いた気がするσ(・ω・`)
…ん?ホントに土方さんかコレ。
「終わりが告げる始まりの鐘」の意味は、
“ひとつの恋が終わって、それが次の恋への始まりの合図”って感じです。
…大体そんなーかーんじー ギャグ○ンガ日和〜♪(←(・д・;)!)